

小濱道博の介護経営よもやま話
※この記事は 2023年7月27日 に書かれたもので、内容が古い可能性がありますのでご注意ください。
ケアマネ採用にも影響 紹介会社への規制強化策を読み解く
- 2023/07/27 09:00 配信
- 小濱道博の介護経営よもやま話
- 小濱道博
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人材の確保は年々厳しさを増している。労働集約型のビジネスである介護サービスにおいて、これは死活問題である。
だが、ケアマネジャーなどの専門職は、ハローワークや無料の求人サイトに広告を載せても、応募がくることはほとんどない。都市部ですら厳しいのだから、労働人口の減少が顕著な地方は推して知るべしである。そこで、人材派遣や有料の求人サイトを利用することになるのだが、その紹介手数料は、職員1人確保するだけで数十万円、場合によっては数百万円にも及ぶ。
もはや人材派遣や有料の求人サイトなくして、人材の確保は難しい時代になっている。
こうした中、厚生労働省は今月10日の社会保障審議会介護保険部会で、介護分野の職業紹介・労働者派遣の規制強化策を提案し、おおむね了承された。
これは、5月11日の財政制度等審議会の分科会で財務省が示した提言を踏まえたものだ。同省の主張は次のようなものだった。
- 介護事業者の約5割は民間の人材紹介会社を活用しており、手数料の相場は年収の3割程度で、それ以上の高額な経費を支払っている事業者も存在する。
- 人材紹介会社を通して職員を採用した場合、離職率が高いという調査結果があり、安定的な職員の確保には必ずしもつながっていない。
- 介護職員の給与は、公費(税金)と保険料が財源となっているため、手数料分の経費は本来、職員の処遇改善に充てられるべきである。
- 介護事業者向けの人材紹介会社に関しては、就職お祝い金の禁止など、現行の規制の徹底や手数料水準の設定など、一般の人材紹介よりも厳しい対応が必要である。
- 特に就職お祝い金は、職員の短期間の離職に直結しており、介護事業者の収益率と人材不足の悪化要因となっている。
- ハローワークや都道府県などを介した公的な人材紹介の強化も検討されるべきである。
その後、財政制度等審議会がまとめた建議(意見書)を受け、政府が6月16日に閣議決定した「骨太の方針2023」では、医療・介護分野における有料職業紹介事業について、「関係機関が連携して、事業の適正化に向けた指導監督や事例の周知を行うとともに、公的な職業紹介の機能の強化に取り組む」と明記された。
さらに、同日閣議決定した新たな「規制改革実施計画」にも、関連する制度の見直しが盛り込まれた=図=。

介護保険部会の資料より
半年以内の離職で紹介料の返還も?
今回厚労省が打ち出した規制強化策は、主に以下の4つである。
- 医療・介護・保育の3分野の有料職業紹介事業者に対して、転職勧奨と就職お祝い金規制に関する集中的な指導・監督を実施し、悪質な事業者を排除する。
※就職お祝い金は、職業安定法に基づく指針の改正(令和3年4月1日施行)で禁止されたため、大部分の人材紹介会社には存在しないが、一部の会社ではいまだに支給されているようだ - 3分野の紹介手数料の平均値・分布、離職率を地域や職種ごとに公表し、有料職業紹介事業のさらなる透明化を図る。
- 優良な紹介事業者の選択を円滑に進めるため、3分野における「適正事業者認定制度」の認定基準について、半年以内に離職した場合の手数料の返還の追加も含めた見直しを検討する。
- ハローワークの機能強化として、オンライン上での求人・求職者の利用推進とハローワークごとの職種別就職実績を毎年度公表する。
半年以内の離職による紹介料の返還は、かなりきつい対応といえるだろう。紹介料の返還は、3カ月以内とする紹介業者が多いのが現状だからだ。ただ、現場サイドの実感としては、雇用から3カ月が経った後に退職するケースが多い。この規制が実現した場合、紹介業者は求職者への事前研修やフォロー体制を強化すると思われる。
早期退職の原因は、紹介業者側の問題や就職お祝い金の存在だけではないだろう。たとえ就職お祝い金があったとしても、辞めることを前提に仕事を探す人はいない。就職先で何らかの問題が生じたため、辞める決断をしたはずであり、介護事業者側にも問題があった点は否めない。
定着率の向上を阻む業界の「職員気質」
85歳人口が増加する一方、労働者人口が激減する2040年。厚労省は同年、69万人の介護職員の不足を見込んでいる。
介護事業者は、職員のフォローアップ体制をしっかりと構築するとともに、定着率の向上に急いで取り組む必要がある。「募集すれば、新しい職員が来てくれた時代」は、とうに終わっているのだ。
定着率が向上しない理由の一つは、介護業界における「職員気質」であろう。人材不足による多忙を理由に、なかなか業務改善が進まない介護施設を見かける。
人材の教育や育成も、介護業界が長年おざなりにしてきた分野だ。いまだに多くの施設や事業所では、福祉学校の新卒者を受け入れた翌日に現場に出し、“一人前扱い”している。これでは、実務経験のない彼らはすぐに辞めてしまうだろう。
一般の企業では、OJTなどをしっかりと行い、新卒の社員を1年がかりで一人前に育てる。介護業界もこうあるべきなのだ。教育や研修の充実によって職員のスキルアップを図り、介護サービスの質を高めるプロセスを回し続けることが重要だ。
一時的な処遇改善で賃金を高くしても、その効果は瞬間的なものに過ぎず、翌月から“既得権”に変わるだろう。必要以上に賃上げを行う余裕があるのであれば、その資金は教育や研修に充てるべきだ。
その結果として、職員のスキルアップと介護サービスの質の向上が実現し、利用者の満足度だけでなく、施設や事業所の稼働率や利益率も上がる。そうした好循環を作ることが大切だ。職員への賃上げは、そうなってから十分に行えば良い。

- 小濱道博
- 小濱介護経営事務所代表。株式会社ベストワン取締役。北海道札幌市出身。全国で介護事業の経営支援、コンプライアンス支援を手掛ける。介護経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。個別相談、個別指導も全国で実施。全国の介護保険課、介護関連の各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター等主催の講演会での講師実績も多数。C-MAS介護事業経営研究会・最高顧問、CS-SR一般社団法人医療介護経営研究会専務理事なども兼ねる。
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