

小濱道博の介護経営よもやま話
※この記事は 2023年8月31日 に書かれたもので、内容が古い可能性がありますのでご注意ください。
いよいよ議論が本格化!次期改定の論点のポイント解説
- 2023/08/31 09:00 配信
- 小濱道博の介護経営よもやま話
- 小濱道博
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今月7日に開かれた社会保障審議会介護給付費分科会で、2024年度(令和6年度)の介護報酬改定に向けた審議の1巡目が終了し、各サービスの論点が出そろった。
次期改定は、6年に1度の診療報酬と障がい福祉サービスとの「トリプル改定」である。3年間続いたコロナ禍の影響や、ウクライナ戦争を起因とした物価高騰などで、現場の経営環境が悪化していることから、プラス改定を望む声が増している。
しかし、国が少子化対策に大きくかじを切った今、その財源となる年間3兆円の原資を確保するため、社会保障費が削減される懸念もある。
2024年度の介護報酬改定の大テーマは、以下の4つである。
- ①地域包括ケアシステムの深化・推進
- ②自立支援・重度化防止を重視した質の高い介護サービスの推進
- ③介護人材の確保と介護現場の生産性の向上
- ④制度の安定性・持続可能性の確保
①については、病気が重症化して医療が必要になっても、可能な限り自宅で過ごしてもらい、看取りまでを行うという地域包括ケアシステムを深化させるため、訪問看護や看護小規模多機能型居宅介護(看多機)などを充実させる方向となっている。今後、ヤングケアラーの問題も取り上げられるだろう。
②については、LIFE(科学的介護情報システム)のさらなる活用と成功報酬の導入がテーマとなる。訪問系サービスと居宅介護支援への「LIFE加算」の創設の可否、通所リハビリへの成功報酬の拡大などが注目ポイントだ。
③については、処遇改善のさらなる充実や3つの処遇改善加算の一本化、有効求人倍率が15.5倍を超えたヘルパーの人材確保策、そして介護現場のICT化の促進がテーマとなる。
④については、介護報酬におけるいわゆる“やりくり”の部分で、既存の加算の整理を含めた制度全体の見直しが行われる方向だ。
介護給付費分科会と同時並行で審議が行われている社会保障審議会介護保険部会では、2割負担の対象拡大や多床室料の自己負担化がテーマとなっており、こちらも予断を許さない。たとえ介護報酬がプラスになっても、新たな自己負担が発生すれば、稼働率に影響が出る可能性が高くなるだろう。
デイケアは月額包括報酬の移行も注目点
ここからは、個別のサービスについて解説したい。
まずは通所系サービスだ。通所介護は「日常生活上の機能向上並びに自立支援につながる質の高いサービス」、通所リハビリは「生活期におけるリハビリテーションのアウトカム」「ストラクチャー、プロセス、アウトカム評価を組み合わせた総合的な評価」「リハビリテーション・口腔・栄養の一体的取組」が論点となっている。
いずれも、リハビリの場としての機能とアウトカム(成果)を今まで以上に求められ、LIFEの活用促進に重点化されるだろう。特に通所リハビリにおいては、一歩進んだアウトカムが求められ、それが将来の成功報酬につながっていくと思われる。ただ、LIFEの正常化が遅れていることもあり、次期改定での導入はあまり進まないとみている。
一方、2021年度の介護報酬改定で2つに分かれた「入浴介助加算」の区分(Ⅱ)については、何らかの見直しが行われるだろう。算定率が1割程度と低調なため、現場からは「単に報酬を引き下げただけではないか」との批判が出ている。
通所リハビリではこのほか、厚生労働省が前回の介護報酬改定で提案したものの、導入が見送られた月額包括報酬への移行も注目ポイントとなるだろう。同省案ではアウトカムの評価指標が設けられ、リハビリの成果が問われる内容だったが、介護における成功報酬の導入は非常に複雑だ。
医療は、1つの治療に複数の医療機関が絡むことは少なく、治療の効果を上げた病院の特定が可能だ。一方の介護は、複数のサービス事業者による協業で成り立っているため、通所リハビリだけに成果を限定することは困難である。
このため、「通所リハビリだけに成功報酬をあげるのはいかがなものか」といった批判の声が上がるわけだが、これは2018年度の介護報酬改定の審議の際、「ADL維持等加算」に対して出た意見と同じである。同省は、LIFE活用によるエビデンスに基づいた成功報酬を創設したいものと思われるが、同じ話を蒸し返された場合、どのようにして意見をまとめるつもりなのだろうか。
解決策として、ケアマネジャーが招集するサービス担当者会議を1つの「チーム」と位置付け、状態の改善・維持を「チーム全体」の評価による成功報酬とすることなどが考えられる。2024年度に見直される法定研修のカリキュラムで、根拠のある支援を組み立てる際の基盤の視点としてLIFEを組み込もうとしているのは、そのための布石とみると合点がいく。
いずれにせよ、ケアマネジャーにおいても、LIFEとの関わりが必須となっていくことは間違いないだろう。在宅サービス事業者は、LIFEへの対応を急ぐ必要がある。
「ケアマネ選択制」はデイにとって“脅威“
小規模多機能型居宅介護(小多機)と看多機については、「更なる普及が求められる中、期待されるサービスを安定的に提供する」という共通の論点が示されている。
この2つのサービスは、厚労省の最重点サービスに位置付けられているにもかかわらず、いまだに経営が安定しない状況が続いている。
その原因の1つが、所属するケアマネジャーの存在とされる。居宅介護支援事業所のケアマネジャーが多機能型に利用者を紹介する場合、結果として自らの利用者を手放すことになる。これが、多機能型の利用促進を阻んでいるとの声もある。
そのため、過去の介護報酬改定の審議においても、多機能型のケアマネジメントを居宅介護支援事業所に移すことが論点になったが、「“使い放題”を助長して管理機能が働かない」などの理由で見送られてきた経緯がある。
今回の審議においても、居宅介護支援と多機能型のケアマネジャーの「選択制」を提案する声が出ている。居宅のケアマネジャーが多機能型のケアマネジメントを担当できれば、居宅のケアマネジャーは多機能型をケアプランに位置付けやすくなり、今まで以上に多機能型の利用が進むことが期待される。
次期改定での「選択制」の実現可能性は高いとみているが、その場合、通所介護の経営者にとっては今まで以上の競合となり、確実に“脅威”となるだろう。
「LIFE加算」創設の可能性は高い
訪問介護は、有効求人倍率が15.5倍を超え、介護職員の確保策は重大な課題となっている。外国人研修生の活用を認めるなどの対策が焦点となるだろう。また、訪問看護はこれまで同様、リハビリ専門職が行う訪問リハビリへの規制強化の行方に注目だ。
居宅介護支援事業所については、2024年度から介護予防支援の指定を受けることが可能になったことから、その報酬体系に注目が集まる。
ケアマネジャーの高齢化となり手の減少が同時に進んでいる中、居宅介護支援事業所のケアマネジャーに対する処遇改善加算の創設を求める声も高まっている。前回の介護報酬改定の審議の際は、いわゆる“ケアプラン有料化と紐付きであったことから、実現には至らなかったが、次の改定での実現可能性は決して低くはないとみている。
また、ケアプランデータ連携システムの普及を後押しする新たな報酬や「LIFE加算」の創設なども期待される。予算枠の問題もあり、「LIFE加算」の行方は流動的との話も聞こえてくるが、2024年度の法定研修カリキュラムの見直しに伴い、LIFEに関する項目が相当数加わることも勘案すると、居宅介護支援に「LIFE加算」が創設される可能性は高いと考える。
いずれにしても、2024年度介護報酬改定の審議はこれから本格化する。今後も、その経過をしっかりと追っていきたい。

- 小濱道博
- 小濱介護経営事務所代表。株式会社ベストワン取締役。北海道札幌市出身。全国で介護事業の経営支援、コンプライアンス支援を手掛ける。介護経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。個別相談、個別指導も全国で実施。全国の介護保険課、介護関連の各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター等主催の講演会での講師実績も多数。C-MAS介護事業経営研究会・最高顧問、CS-SR一般社団法人医療介護経営研究会専務理事なども兼ねる。
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