

小濱道博の介護経営よもやま話
※この記事は 2023年9月29日 に書かれたもので、内容が古い可能性がありますのでご注意ください。
義務化まで半年…居宅のBCP策定のポイント紹介
- 2023/09/29 09:00 配信
- 小濱道博の介護経営よもやま話
- 小濱道博
-
厚生労働省は9月15日の社会保障審議会介護給付費分科会において、BCP(業務継続計画)の策定状況を報告した。
回答した居宅介護支援事業所の7割以上は、期日となっている来年3月までに策定を終えるとしたが、「策定する目処は立っていない」と回答した割合は、感染症BCPで23.4%、自然災害BCPで25.4に上った=グラフ=。

その後、同省は同月21日の介護報酬改定検証・研究委員会おいて、7月時点の策定状況を公表。居宅介護支援事業所で「策定完了」だったのは、感染症BCPで22.7%、自然災害BCPで21.0%にとどまり、いずれも約6割は「策定中」だった。また、「未策定(未着手)」と回答した割合は、感染症BCPで16.3%、自然災害BCPで18.4%を占めた。
BCPの策定は、2021年度(令和3年度)の介護報酬で全サービス事業者に義務化されたが、来年3月までは経過措置期間となっている。同年4月以降も未策定の場合は運営基準違反となり、行政の指導に従わなければ、指定取り消しなどの処分が下される。
BCPは「職員>事業所>利用者」で
私はこれまで、行政の集団指導でBCPの講座を担当したほか、各地の介護支援専門員協会等の依頼を受け、BCPの研修会の講師を務めてきた。また、地域の勉強会で策定指導も行っている。
私の周りでは、BCPの策定を完了した居宅介護支援事業所が着実に増えているが、全国に目を向けると、作成の目処が立たない事業所は、厚労省が示す数字よりも多いと感じる。
これまで300事業所以上のBCP策定に関わった経験から、策定のポイントを紹介したい。
ある事業所でのディスカッションの際、医療機関の医師が、「一番大切なのは職員一人ひとり、次に介護サービスを提供する組織であり現場、最後に生存者だ」と言ったことが心に残った。
どんなに感染対策を徹底したとしても、職員は自分の身を守ることを最優先とすべきである。職員の安全が確保できてこそ、介護サービスが提供できるからだ。
介護の仕事は、個人プレーではなくチームプレーである。組織のマネジメントがしっかり機能してこそ、介護サービスが提供できる。だが、これは裏を返すと、職員が倒れてしまうと何もできないことを意味する。この考え方は、感染症BCPだけでなく、自然災害BCPにおいても同じである。
BCPを策定する際、利用者一人ひとりの状況、とりわけ重度者の安否確認の手段や避難方法、備蓄品について検討を進めるケースをみかける。
ケアマネジャーとしては当然であるが、ことBCPにおいては「不適」である。先に述べたように、BCPで優先すべきは「職員と組織体制の維持」だ。職員が安全で健康であり、組織が機能していれば、利用者へのサービスは継続できる。BCPにおいて、利用者個人の対策の検討は必要ないことをご理解いただきたい。
少ないスタッフでいかに業務を続けるか
居宅介護支援事業所で実際に感染症が発生した場合、事前の感染症対策指針や感染症対策BCPなどで検討した内容と大きな違いが生じることも珍しくない。
居宅介護支援事業所における最大の経営リスクは、職員の多くが濃厚接触者に認定されることである。濃厚接触者に認定されると、たとえPCR検査が陰性でも、原則2週間は自宅待機を余儀なくされる。
新型コロナについては、感染症法上の分類が5類に移行し、現在、事業所側の判断に委ねられているが、介護現場では4、5日間の自宅待機後、PCR検査の結果が陰性になってから職場復帰するケースが多いようだ。
だが、広く感染症においては、2週間の自宅待機が原則となっている。このため、出勤可能な職員は、定期的な消毒作業や換気、休職中の職員の業務を分担して担当する―など、通常業務以外に何役もこなすことが求められる。
これは自然災害においても同様で、事業所が被災すると、職員も被災している可能性が高いため、特に被災直後は、出勤できる職員が少なくなる。出勤できる職員だけで役割分担を行い、業務を継続する方法を考える必要がある。
利用者の安否確認については、担当事業所と分担することも事前に検討しておく。また、デイサービスなどが休業を余儀なくされた場合に備え、訪問サービスへの移行などを事前に検討し、BCPに位置付けておくことも、居宅介護支援事業所では重要な検討テーマとなる。
BCPは策定完了時点がスタート
BCPは、あくまで頭で考えた対策であり、研修や訓練との間にも大きなギャップがある。BCPは、永遠に完成しないことを知っていただきたい。策定が完了した時点がスタートとなる。
厚労省からBCPのひな型が出ているが、後半になると一気にハードルが上がる。地域との連携や共同訓練などが検討テーマになるからだ。これらの項目については、後日検討したり削除したりしても問題はない。ひな型を全て埋める必要はないのだ。
ざっくりとでもいいから、できる範囲で完成させてみることが重要である。その上で、定期的に研修と訓練を実施し、中身を肉付けしてバージョンアップさせるのだ。
他の事業所と共有し、お互いのBCPを補完し合うのも良いだろう。経験豊富な専門家にアドバイスをもらうことも有益である。BCPを常にアップデートし続けるという意識が大切である。
繰り返しになるが、とにかくできるところから作り始めていただきたい。残された時間はわずかである。

- 小濱道博
- 小濱介護経営事務所代表。株式会社ベストワン取締役。北海道札幌市出身。全国で介護事業の経営支援、コンプライアンス支援を手掛ける。介護経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。個別相談、個別指導も全国で実施。全国の介護保険課、介護関連の各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター等主催の講演会での講師実績も多数。C-MAS介護事業経営研究会・最高顧問、CS-SR一般社団法人医療介護経営研究会専務理事なども兼ねる。
スキルアップにつながる!おすすめ記事
このカテゴリの他の記事
こちらもおすすめ
ケアマネジメント・オンライン おすすめ情報
介護関連商品・サービスのご案内
ケアマネジメント・オンライン(CMO)とは
全国の現職ケアマネジャーの約半数が登録する、日本最大級のケアマネジャー向け専門情報サイトです。
ケアマネジメント・オンラインの特長
「介護保険最新情報」や「アセスメントシート」「重要事項説明書」など、ケアマネジャーの業務に直結した情報やツール、マニュアルなどを無料で提供しています。また、ケアマネジャーに関連するニュース記事や特集記事も無料で配信中。登録者同士が交流できる「掲示板」機能も充実。さらに介護支援専門員実務研修受講試験(ケアマネ試験)の過去問題と解答、解説も掲載しています。



