

結城教授の深掘り!介護保険
※この記事は 2023年12月19日 に書かれたもので、内容が古い可能性がありますのでご注意ください。
ほぼ見えた24改定での人手不足対策~ケアマネは救われるか?!~
- 2023/12/19 09:00 配信
- 結城教授の深掘り!介護保険
- 結城康博
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11月30日と12月4日の社会保障審議会介護給付費分科会の議論で、2024年度の介護報酬改定で実施されるケアマネジャー不足への対応策の概要が、ほぼ見えてきた。主なものとしては「管理者の兼務を大幅に緩和」「ケアマネらのテレワークの拡大」「オンラインモニタリングの導入」「居宅介護支援の逓減制の基準件数の引き上げ」-といったところだろうか。「3つの処遇改善策の一本化」もあわせ、これらの施策が人手不足に悩む現場に、どのような影響をもたらすのかを考えていきたい。
現場には朗報と言い切れない「管理者兼務の緩和」
管理者の「兼務」できる事業所の範囲が広がる。具体的には「同一敷地内における他の事業所、施設等ではなくても差し支えない」と明確化される。
この要件緩和は、朗報のように聞こえるかもしれない。だが一方で、多くの管理者が、より煩雑な働き方を迫られる可能性もはらむ。
物理的に離れた事業所間での兼務は、同一敷地内の事業所間の兼務より、どう考えても手間も移動時間もかかる。当然、管理者の負担は増えるだろうし、リーダークラスの介護職員らは、兼務している管理者と話をする時間が、ますます減ってしまうだろう。
こうした懸念がある以上後、この緩和は現場にとって、必ずしも朗報とはいえない。もっとも、経営者側にとっては、有効な人材を活用できる幅が広がるためメリットは大きいかもしれない。
限定的ながら負担軽減が期待できる「テレワークの拡大」
人員配置基準などを超える部分について、個人情報の適切な管理などを前提に「テレワーク」を実施することが可能とする施策も提案されている。
ケアマネや生活相談員であれば、この施策によって移動時間などを減らすことができるから、業務負担軽減を期待できる。ただし、相談業務であっても、利用者のモニタリングなど、面談することで成立する業務も少なくないから、この施策で軽減できる負担は限定的だろう。
負担が増えるだけの可能性も―「オンラインモニタリング」の導入
「テレビ電話などを活用したオンラインモニタリングの導入」は、前月の寄稿でも指摘した通り、専門性を無視した施策である。提案した厚労省は、厳しい基準をもってケアマネジメントの質を担保するよう工夫していると強弁するかもしれない。だが、オンラインモニタリングの3つの要件(※)を完全にクリアしたとしても、それをもって、身体の状況も家庭環境も、2カ月前や半年前と変化がないという担保にはなりえない。
少し強い言い方をすれば、オンラインモニタリングの導入がケアマネの負担を軽くしたり、人手不足解消につながったりすると考えるのは、ケアマネの専門性を完全に無視した空想に過ぎない。
さらにいえば。あえてその空想に挑んでみても、この施策によってケアマネの負担が軽くなるとは考えにくい。
アナログの世界で育ち、働いてきた高齢者には「スマートフォンくらいは使っているけど、動画での通話となるとちょっと…」といった人が多い。そんな高齢者に、テレビ電話などの使い方を教え、覚えてもらうのは、それだけでも相当な負担だ。当然ながら、そんな機器の使い方を電話やメールで伝えきれるはずがないから、結局は高齢者の元に足を運ぶことになる。そして、それでも使い方をマスターしてくれなければ「もう毎月、訪問で話を聞いた方が早い」となってしまうのが関の山だ。
つまり、オンラインモニタリングの導入は「テレビ電話などの使い方を教える負担だけが増える愚策」となりかねないのだ。
国の思惑が露骨に形となった「逓減制のさらなる緩和」
「居宅介護支援の逓減制の基準件数の引き上げ」は、「とにもかくにも1人のケアマネにより多くの利用者を担当してもらおう」という国の思惑が露骨に形となった施策である。一体、「より多くの利用者を担当できるようになるから、ケアマネになりたい!」と考える殊勝で奇特な人が、どのくらいいるというのか。これでケアマネ不足を解消できるはずがない。
中には、「多くの件数を担当できるようになれば、収入も増加し、処遇改善も実現できる」と考える人もいる。確かに、理屈は間違っていない。そして、その考え方に多くのケアマネが共感しているなら、現行制度でも逓減制の緩和を活用するケアマネが多数派を占めることになるはずだ。
だが、現実は違う。逓減制の緩和を活用しているケアマネは1割にも満たない。そんな中で、さらに逓減制を緩和したところで、活用が進むとはとても思えない。
負担軽減はあまり期待できない「処遇改善加算の一本化」
また、2024年度には現在の3つの加算が一本化され、「介護職員等処遇改善加算」が創設される見通しだ。そして、厚労省の資料によれば、新加算Ⅰ~Ⅳの4段階の加算区分が新設されるようだ(図1参照)。
図:新加算Ⅰ~Ⅳの4段階のイメージ図

厚労省社会保障審議会介護給付費分科会
「資料1:介護人材の処遇改善等(改定の方向性)」2023年11月30日14頁より
3つの加算を一本化すること自体は、制度の簡素化と言う観点から良い施策と思う。しかし、新たに新加算Ⅰ~Ⅳをクリアするためには、雑多な作業があることは認識しておく必要がある。
例えば、この加算を算定する上で必ずクリアしなければならない職場環境要件には「入職促進に向けた取組」「資質の向上やキャリアアップに向けた支援」「両立支援・多様な働き方の推進」「腰痛を含む心身の健康管理」「生産性向上のための業務改善の取組」「やりがい・働きがいの醸成」といった内容が、新たに盛り込まれている。
これらをある程度達成しなければ「加算」は算定できない。具体的にどのくらいの要件を満たさなければならないかは、図2を確認いただきたい。特に、新加算Ⅰを取得するための環境整備は、かなりハードルが高い。

つまり、「一本化したからといって、業務負担が急激に減る」というわけではないということだ。さらに、来年2月の介護職員への「6000円の賃上げ」についても、別枠での事務作業が求められるはずだ。
人手不足解消しうる施策とは、なりえない!
今回、提案された施策を並べてみると、ケアマネの「専門性」を後退させてでも、なんとか人手を確保しようとするような、苦肉の策が目立つ気がする。ただ、そこまで苦労しておきながら、十分な負担軽減にはなりえなかったり、現実性にとぼしかったりする施策が目立つ。
最後にふれた「介護職員等処遇改善加算」の創設までまとめて考えても、厚労省が2024年度の介護報酬改定に向けて提案した施策は、深刻な人材不足を解消し、介護業界に福音をもたらす存在にはなりえない。残念ながら、そう断じざるを得ない。
※厚労省が示す3つの要件は次の通り
- 利用者の同意を得る
- サービス担当者会議等において、主治医、サービス事業者らから「利用者の状態が安定している(主治医の所見等も踏まえ、頻繁なプラン変更が想定されない等)」「利用者がテレビ電話装置等を介して意思表示できる(家族のサポートがある場合も含む)」「テレビ電話装置等を活用したモニタリングでは収集できない情報については、他のサービス事業者との連携により情報を収集する」について合意が得られている
- 少なくとも2カ月に1回(介護予防支援の場合は6カ月に1回)は利用者の居宅を訪問する

- 結城康博
- 1969年、北海道生まれ。淑徳大学社会福祉学部卒、法政大学大学院修了(経済学修士、政治学博士)。介護職やケアマネジャー、地域包括支援センター職員として介護系の仕事に10年間従事。現在、淑徳大学教授(社会保障論、社会福祉学)。社会福祉士や介護福祉士、ケアマネジャーの資格も持つ。著書に岩波ブックレット『介護職がいなくなる』など、その他著書多数がある。
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