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結城教授の深掘り!介護保険

※この記事は 2024年1月26日 に書かれたもので、内容が古い可能性がありますのでご注意ください。

居宅の基本報酬引き上げ!それでも加速するケアマネ不足

1月22日、新たな介護報酬の単位案が示された。居宅介護支援費は、いずれの区分でも基本報酬が引き上げられる見通しだ。基本報酬が削られたり、ほぼ現状維持にとどまったりしたサービスがあることを思えば、一定の評価はできる結果といえる。だが、しかし。これによって慢性的なケアマネ不足が解消できるかというと、そうは思えない。むしろ、さらに人材不足は加速化していくと予想せざるを得ない。

評価できる基本報酬アップと加算の単位積み増し

居宅介護支援費(I)では、要介護1・2は10単位の引き上げ、要介護3・4・5は13単位の引き上げが提案された。2024年度の介護報酬改定全体は1.59%の引き上げとなったが、その半分以上(0.98%)は介護職員らの処遇改善のための原資で、各サービスの基本報酬などのための原資は0.61%にすぎなかった。さらに、「介護事業経営実態調査」の結果で、居宅介護支援の収支差率は大幅に改善していた(※注)ことなどを思えば、10単位以上の基本報酬の積み増しが実現できたことは、前向きに評価してよい。

新たな単位 現在の単位からの増減
居宅介護支援費I(i) 要介護1・2 1086 10
要介護3・4・5 1411 13
居宅介護支援費I(ii) 要介護1・2 544 5
要介護3・4・5 704 6
居宅介護支援費I(iii) 要介護1・2 326 3
要介護3・4・5 422 4
居宅介護支援費II(i) 要介護1・2 1086 10
要介護3・4・5 1411 13
居宅介護支援費II(ii) 要介護1・2 527 5
要介護3・4・5 683 6
居宅介護支援費II(iii) 要介護1・2 316 3
要介護3・4・5 410 4

しかも、特定事業所加算のすべての区分で14単位の引き上げが行われる見通しである上、入院時情報連携加算(Ⅰ)(Ⅱ)も、それぞれ50単位、100単位の引き上げとなる方針だ。

これらの加算を取得できる居宅介護支援事業所は、かなり収入が増えるのではないだろうか。特に、10名以上のケアマネジャーが雇用されている居宅介護支援事業所の場合、かなりの増収が見込めるだろう。

人材獲得競争で、居宅介護支援事業所は勝ち残れるか?

しかし、それでも、ケアマネ不足を解消することはできまい。なぜながら、この程度の増収では充分な賃上げに結びつかないからである。

例えば、40件を担当しているケアマネの場合、1件10単位程度の基本報酬が引き上がったところで、増収分は4000円程度しかならない。さらに特定事業所加算の上位区分が加わったところで、期待できる増収は2万円といったところだろう。

ただし、特定事業所加算の上位区分を算定できる事業所など、ごく限られている。仮に特定事業所加算の下位区分を取っている、と想定するなら、期待できる増収分は、せいぜい1万円に達するかどうか、といったところではないか。

その賃上げで、居宅介護支援事業所は他産業との労働市場での競争に勝てるだろうか?もしくは、介護職員をケアマネ業界に招き入れることができるだろうか?

介護職員の多くは「介護職員等処遇改善加算」の恩恵に預かれる上、2月からは6000円の賃上げも実施される。また、厚生労働省が昨年発表した2023年の賃金引き上げ実態調査によると、基本給など月額所定内賃金の全産業の引き上げ額は、平均でも9437円に達していた。

賃上げだけで見れば、居宅介護支援事業所の勝ち目は薄そうだ。

見過ごせない、担当件数の緩和に伴う作業負担の増加

不十分な賃上げ以外の不安要素もある。今回の改定によって、基本報酬が減算となる件数が40件未満から45件未満にまでに緩和された点だ。

この緩和を労働者の視点から見れば、44件まで担当することを求められる可能性が高くなった、と捉えることができる。

効率よく業務をこなせるスーパーケアマネであれば、44件まで担当しても業務に問題はないかもしれない。しかし、この人手不足の中では、能力の有無にかかわらず「ケアマネであれば、44件まで引き受けることが当然」などという雰囲気が醸成されてしまうかもしれない。そうなってしまった時、現場のケアマネの多くが、かつてない業務負担にあえぐことになる。

ケアマネ不足を解消したいなら、更新研修の撤廃を!

そもそも。賃金が低いから、という理由だけでケアマネ不足に陥っているわけではない。賃金は重要な要素だが、同じくらい大きな理由として挙げられるのが、理不尽な業務負担の重さである。さらに、これまで何度か指摘してきた通り、更新研修をはじめとした研修の多さもケアマネ不足に拍車をかけている。

つまり、多少、居宅介護支援費の介護報酬を引き上げただけでは、ケアマネジャーの人手不足解消の処方箋とはなりえないのだ。少なくとも、今回の報酬改定程度の引き上げでは、どうにもならない。

国も自治体も、その現実をしっかりと受け止め、今後もケアマネ不足解消のために知恵を絞ってほしい。

具体的には「資格」そのもののあり方-つまり、更新研修の撤廃―を、本気で議論する必要があるだろう。本気で、ケアマネ不足を解消する気があるならば。

(※)介護事業経営実態調査で収支差率が改善すると、報酬は低く抑えられる傾向がある

結城康博
1969年、北海道生まれ。淑徳大学社会福祉学部卒、法政大学大学院修了(経済学修士、政治学博士)。介護職やケアマネジャー、地域包括支援センター職員として介護系の仕事に10年間従事。現在、淑徳大学教授(社会保障論、社会福祉学)。社会福祉士や介護福祉士、ケアマネジャーの資格も持つ。著書に岩波ブックレット『介護職がいなくなる』など、その他著書多数がある。

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