

小濱道博の介護経営よもやま話
居宅の基本報酬プラスで賃上げは大きな経営課題に
- 2024/01/31 09:00 配信
- 小濱道博の介護経営よもやま話
- 小濱道博
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社会保障審議会介護給付費分科会は1月22日、令和6年度(2024年度)の介護報酬改定案を了承し、武見敬三厚生労働大臣に答申した。
居宅介護支援の基本報酬は、0.9%弱のプラス改定となった。さらに、特定事業所加算も一律14単位アップとなり、関係者はほっと一息といったところであろうか。
今回、全ての介護サービスがプラス改定になったわけではない。訪問介護は、なんと2%以上の基本報酬のマイナス、定期巡回・随時対応型訪問介護看護に至っては4%以上のマイナスとなっている。
この2つのサービスは、昨年11月に公表された介護事業経営実態調査において、それぞれ7.8%、11%と非常に高い収支差率(利益率)を示していたため、ある程度のマイナスは想定していたが、それを大きく超える数字が示されたのには驚いた。
居宅介護支援も4.9%と決して低くはない収支差率を示していたので、基本報酬が本体の改定率の0.61%を超えたことは評価できる。
基本報酬アップの分岐点となったのは、賃上げの考え方である。訪問介護は介護職員だけで構成されるため、介護職員等処遇改善加算を取得すると、全ての職員にお金が回る。
一方、居宅介護支援は同加算の対象にはなっておらず、国は基本報酬の引き上げ分を処遇改善に充ててもらう方針を示している。逓減制が緩和され、ケアマネジャー1人当たりの担当件数の基準が44件に引き上げとなったのも、増収分を処遇改善の原資としてもらう意図があることは間違いないだろう。
もちろん、賃上げは義務ではない。しかし、昨今の圧倒的なケアマネジャー不足を勘案すると、経営努力を含めた処遇改善は急務であるとともに、大きな経営課題である。
ターミナル加算の制限撤廃は大規模有利
加算関連に目を移すと、ターミナルケアマネジメント加算の対象疾患に制限がなくなった点に注目している。これまでは末期がんのみが対象だった。
算定対象が大きく拡大したことに合わせて、特定事業所医療介護連携加算の算定要件のうち、ターミナルケアマネジメント加算の算定回数については、現行の「5回以上」から「15回以上」へと一気にハードルが上がる。
対象疾患の要件が緩和されたとはいえ、年15回の算定回数は非常に厳しい。小規模事業者の算定が困難になるのは確実といえるだろう。
そもそも、ターミナルケアマネジメント加算の算定要件である死亡日の居宅訪問自体、現実的には厳しい。看取り期に入った利用者のケアプランが見直されることは非常にまれで、大半のケースでは、静かに旅立ちを見守るだけである。
居宅訪問の理由がない以上、死亡日に訪問する理由も見出しにくいといえる。さらに言えば、死亡日は家族も多忙であるため、ケアマネジャーの訪問そのものが歓迎されない。
こうした点を踏まえると、年15回の算定は、ケアマネジャーの人数が多い大規模事業所でない限り難しいといえる。
とは言え、ターミナルケアマネジメント加算は月400単位、特定事業所医療介護連携加算は月125単位だ。可能な限り、死亡日に訪問できる体制を構築し、算定を目指すべきである。
「同一建物減算」の新設は必然だった
居宅に報酬アップのムードが漂う中、サービス付き高齢者向け住宅などを対象とした「同一建物減算」が新設される見通しとなった。
居宅介護支援事業所と同一建物、同一敷地内の建物に居住する利用者が1人でもいれば、基本報酬が5%減算となる。異なる建物の場合は、1月当たりの利用者数が20人以上の建物に居住する利用者が対象となる。
通常、モニタリング訪問には移動時間や交通費が発生するが、事業所と同じ建物に居住する利用者の場合は、それらのコストは発生しない。大人数の利用者が同一建物に居住する場合は、建物内の移動で事足りる。
「同一建物減算」は訪問介護などで既に導入されており、居宅介護支援事業所がいつ対象になっても不思議ではなかった。
次回以降、詳しく解説するが、ほかにも予防ケアプランの報酬新設、BCP(業務継続計画)や高齢者虐待関連の減算など、多くの経営課題が浮かび上がっている。
改定案は、厚労省のホームページで全て見ることができる。しっかりと読み込んで、新年度に備えるべきである。

- 小濱道博
- 小濱介護経営事務所代表。株式会社ベストワン取締役。北海道札幌市出身。全国で介護事業の経営支援、コンプライアンス支援を手掛ける。介護経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。個別相談、個別指導も全国で実施。全国の介護保険課、介護関連の各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター等主催の講演会での講師実績も多数。C-MAS介護事業経営研究会・最高顧問、CS-SR一般社団法人医療介護経営研究会専務理事なども兼ねる。
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