“あるある”で終わらせない!失敗を生かすケアマネジメント

課題解決は誰のため?ケアマネとしての判断に自信が持てない…

介護業界に入った1999年、私は特別養護老人ホームで介護士として勤務していました。

担当したフロアにはほぼ寝たきりの方ばかり、30人ほどのご入居者がいました。

初めて働く介護現場で驚いたのは、看護師が介護士に対して、「〇〇さんは今日は〇〇なので、〇〇して様子を観察してから、また報告してください」と、事細かく指示を出すことでした。

「フロア会議」という名の処遇検討では、「〇〇さんは〇〇できなくなったので、〇〇を日勤帯で対応してください」「〇〇さんは最近転倒が目立ってきましたので、移動は車いすを使用してください」など、“安全第一”でケアの内容が決まっていました。

当時、ご入居者から意見を聞いたり、ケアの内容について同意を得たりすることはありませんでした。

「問題は全て介護側で解決します」というスタンスで、私は育てられたのです。

ケアマネになって感じた違和感

私はケアマネジャーになった後も、「問題は介護側で解決する」という価値観から抜け出せませんでした。

ご利用者の問題(生活課題)やその解決方法は、頭にぱっと浮かぶのです。

ご家族に対しても、「このような状態の時は、〇〇〇が問題なので、〇〇する方が良いと思います。看護の体制がある、機能訓練ができるデイサービスを利用すると良いと思います」などとすぐに提案できるので、大抵のご家族は「それなら、デイサービスの手続きをお願いします」と乗ってきてくれました。

まだ新人ケアマネだった私は、「ご利用者の問題(生活課題)の解決」イコール「仕事をしている」感じがして、気持ち良くなっていました。

ところが、この対応は独居のご利用者には全く通じませんでした。

いつものように、ケアの内容を提案した時のことです。ご利用者は「デイサービスには行きません」「ヘルパーは要りません」とおっしゃいました。

新人ケアマネの私は、「困ったな…。サービスを拒否された」と思い込み、支援や介入の方法について考えることが多くなりました。

同僚に相談すると、「支援困難事例だね」と言われましたが、「これが支援困難事例…、そうなの?」と違和感を覚えました。

「支援困難事例」という言葉が腑に落ちなかった私は、ケアマネジメントの本に答えを求めました。また、学会や研究大会にも参加するようになりました。

これらの学びを通して、支援のあるべき姿勢とは、「利用者の思いを重んじ、自立支援を行うこと」であると理解できました。ケアマネジャー自身の誤った支援や介入、価値観の押し付けによって、“支援困難事例”が生まれることも知り、ケアマネジャーとして優先すべき価値や倫理について、わかり始めてきました。

「安全」と「思い」との間で揺れる

そんなある日、入院していたAさんから、病院のMSWを通して連絡が入りました。退院の支援をしてほしいようです。

「Aさんは『いつもの2階の寝室で寝たい』と言っていますが、階段は危ないので、1階で寝られるように環境を整えてください」―。病院のMSWと理学療法士から、担当ケアマネジャーの私にリクエストがありました。

病院側から「安全第一」とは言われたものの、Aさんの妻は、認知症の症状のある夫が、1階で寝ることを理解できるのかと不安でした。

病院でAさんの動きを確かめ、階段昇降は「十分可能」と評価するとともに、本人の意向も確認しました。妻も、階段の昇り降りに問題がなければ、夫の希望をかなえてあげたいと考えていました。

実は、妻がそう願う理由はもう1つありました。それは、1階の部屋にお孫さんのおもちゃが置いてあることでした。

寝室のためにおもちゃを片付けてしまうと、孫が遊びに来なくなるのではないかと心配したのです。孫との時間が減ると、Aさん夫婦の楽しみ(生きがい)も減ってしまいます。

ところが、妻の最終判断は「1階に寝室を作る」ことでした。「階段は危ない」という病院の説明の前に、当初の考えを諦めたようです。

病院側は、担当ケアマネジャーの私にAさんを説得するよう求めてきました。

ただ、私自身は、AさんのADLを考えると、2階への移動は可能だと思っていましたし、お孫さんとの交流が減ってしまえば、QOLやADLの低下につながるため、Aさんの希望通り、2階の寝室で良いと考えていました。

私は、自分と反対の考えを説得することに複雑な気持ちを抱くとともに、ケアマネジャーとしての判断に自信が持てなくなってしまいました。

山田友紀
特別養護老人ホームやデイサービス、訪問介護、居宅介護支援の相談業務などに従事した後、2016年、京都市内でデイサービスなどを運営する株式会社「ふくなかまジャパン」の取締役に就任。2018年以降は、同市内にある居宅介護支援事業所「ふくなかま居宅介護支援センター」の管理者も務める。現在は、マネジメントや人材育成の講師を務めているほか、一般財団法人生涯学習開発財団が認定する「プロコーチ」としても活動している。

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