

小濱道博の介護経営よもやま話
※この記事は 2023年12月28日 に書かれたもので、内容が古い可能性がありますのでご注意ください。
改定が居宅の経営を直撃!規模で収益格差はさらに拡大
- 2023/12/28 09:00 配信
- 小濱道博の介護経営よもやま話
- 小濱道博
-
介護事業の経営モデルは、スケールメリット、すなわち規模の利益を獲得することが重要である。
前回のコラムでも触れたが、居宅介護支援においては、特定事業所加算の算定に必要な「主任ケアマネジャー1名+常勤ケアマネジャー2名以上」となることが、収益安定化の必須要素となっている。この加算を算定しない限り、収支はマイナスであり、厚生労働省は、居宅介護支援に独立性を求める意味でも、事業所の大規模化を推奨している。
社会保障審議会介護給付費分科会は12月19日、令和6年度(2024年度)の介護報酬改定に関する審議報告を取りまとめた。
これを読むと、今回は、事業所の大規模化をさらに促すための改定であるとともに、個々の事業所の質の向上がより求められている改定であると感じる。財務諸表の提出の義務化を例に挙げても、事務員などが雇用されていない小規模事業所にとっては、大きな負担となるだろう。
一方、全体の改定率は1.59%で、前回(2021年度)の改定の0.7%を大幅に上回り、施設の光熱費などへの対応分を含めると、実質的には2.04%相当の引き上げとされている。しかし、本体部分には、来年6月からの介護職員への処遇改善分の0.98%が入っている。つまり、居宅介護支援事業所に回るのは残りの0.61%にとどまり、実際は前回を下回る結果となった。
処遇改善の報道が先行していることなどもあり、事業者の間では、今回の改定について楽観的な雰囲気が漂っている。
筆者が講師を務める事業者向けのセミナーにおいても、参加者の表情に危機感は乏しいように映る。しかし、ひとたびセミナーが始まると、時間の経過と共に顔つきは厳しくなる。そして終了時、会場内は重苦しい雰囲気に包まれ、「ボリュームがあり過ぎて消化できない」といった悲鳴にも似た声が相次ぐ。
そうなのだ。令和6年度の介護報酬改定は過去最大規模の改定であり、居宅介護支援事業所の経営を直撃するのである。
取扱件数見直しは大規模に非常に有利
審議報告における居宅介護支援の改定内容は、全サービスの共通項目を含めると、合計21項目に及ぶ。
介護支援専門員1人当たりの取扱件数は、従来の39件から44件に増え、ケアプランデータ連携システムを導入し、事務員を配置している場合は49件まで広がる。
予防ケアプランのカウントが2分の1から3分の1になったことについては、事業者の間で賛否が渦巻いているが、明らかなのは、取扱件数の見直しは大規模事業所に非常に有利であるということだ。
ケアプランデータ連携システムの導入と事務員の配置は、ICT化で業務の効率化が図られていることを意味する。もちろん、個々のケアマネジャーのスキルや、担当するケースの難易度などにも左右されると思うが、ICT機器を導入している大規模事業所では、担当件数を底上げすることは容易であろう。
審議報告では、テレビ電話などを活用した「オンラインモニタリング」によって、訪問回数を緩和することも盛り込まれているが、これも大規模事業所に有利といえるだろう。
反対に、ICT化に取り組んでいない小規模事業所にとって、こうした見直しは重荷となる。今回の改定で、小規模事業所と大規模事業所の収益格差はより一層、拡大していくだろう。
BCP策定、減算に経過措置も要注意
来年3月末までに全ての事業者は、BCP(業務継続計画)の策定と、高齢者の虐待防止のための措置を講じる必要がある。これらの対応については、小規模事業所ほど遅れており、この傾向は介護サービス全体に言えることだ。
審議報告では、いずれも未対応の事業所に対する基本報酬の減算が盛り込まれ、高齢者の虐待防止のための措置については来年4月1日から(福祉用具貸与を除く)、BCPについては令和7年(2025年)の4月1日から適用される見通しだ。
注意すべきは、BCPの策定期限そのものに変更はないという点だ。減算にならなくとも、行政の運営指導の際、運営基準違反として指導の対象となるため、やはり、どちらも年度内に完了しておくべきだろう。
小規模の経営環境はより厳しさを増す
ここ数年、居宅介護支援事業所が減少する一方、特定事業所加算の算定事業所は増加し続けている。これは、小規模な事業所が廃業し、特定事業所加算の算定が可能な「主任ケアマネジャー1名+常勤ケアマネジャー2名以上」の事業所への再編成が進んでいる証である。
事業所の大規模化は自然の流れの中で進んでおり、令和6年度の介護報酬改定によって、その動きはさらに加速するであろう。これは反対に、小規模事業所の経営環境がより厳しさを増すことを意味する。
審議報告では、利用者が居宅介護支援事業所に併設するサービス付き高齢者向け住宅など入居している場合の「同一建物減算」の創設も盛り込まれているが、これも小規模事業所には逆風となるであろう。
コロナ禍が終わり、時代は新たな局面を迎えている。そしてこのことは、介護業界においても例外ではない。今回の改定を侮ってはならない。来年春に向け、直ちに情報収集を急ぐべきである。

- 小濱道博
- 小濱介護経営事務所代表。株式会社ベストワン取締役。北海道札幌市出身。全国で介護事業の経営支援、コンプライアンス支援を手掛ける。介護経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。個別相談、個別指導も全国で実施。全国の介護保険課、介護関連の各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター等主催の講演会での講師実績も多数。C-MAS介護事業経営研究会・最高顧問、CS-SR一般社団法人医療介護経営研究会専務理事なども兼ねる。
スキルアップにつながる!おすすめ記事
このカテゴリの他の記事
こちらもおすすめ
ケアマネジメント・オンライン おすすめ情報
介護関連商品・サービスのご案内
ケアマネジメント・オンライン(CMO)とは
全国の現職ケアマネジャーの約半数が登録する、日本最大級のケアマネジャー向け専門情報サイトです。
ケアマネジメント・オンラインの特長
「介護保険最新情報」や「アセスメントシート」「重要事項説明書」など、ケアマネジャーの業務に直結した情報やツール、マニュアルなどを無料で提供しています。また、ケアマネジャーに関連するニュース記事や特集記事も無料で配信中。登録者同士が交流できる「掲示板」機能も充実。さらに介護支援専門員実務研修受講試験(ケアマネ試験)の過去問題と解答、解説も掲載しています。



