管理栄養士×ケアマネジャー対談
経口栄養飲料の「広がる選択肢」がもたらす可能性
在宅支援において食生活は最重要項目の一つであり、利用者さんの栄養状態を改善するための手段は少しでも多く持っておきたいもの。そこで注目してほしいのが経口栄養飲料です。ここでは、在宅支援における栄養の課題や経口栄養飲料の可能性について、スギ薬局で管理栄養士として活躍する牧野紗希さんと、ケアマネジャーの上野扶美枝さんにお話しいただきました。
- 牧野紗希さん(左)
- 管理栄養士。2016年スギ薬局入社。
店舗での栄養相談に加え、地域包括支援センターや行政主催の市民向け栄養講座の実施。
さらには行政の総合事業で行う訪問栄養相談に従事。2022年にケアマネジャーの資格を取得。 - 上野扶美枝さん(右)
- 都内の居宅介護支援事業所にて、管理者、主任ケアマネジャーとして勤務。ケアマネ歴21年のベテランケアマネジャー。
ケアマネジャーこそ栄養状態に注目してほしい
上野:長年にわたりケアマネジャーとして活動してきましたが、「食事が摂れなくなってきた」「体重が減ってきた」という悩みを持つ方は非常に多い印象です。年齢を重ねることで十分な食事量を保てなくなり、「栄養が不足しているのではないか」と心配したご家族や介護スタッフから連絡を受けることも少なくありません。
牧野:私はスギ薬局の店頭に立つほか、総合事業(介護予防・日常生活支援総合事業)で訪問栄養指導にも携わっているのですが、要支援の段階でも栄養の悩みは生じます。地域包括支援センターから「直近2か月で体重が3kgも減っている方がいます!」と相談を受け、栄養状態に問題がないかお調べしたこともありました。
上野:当事者や関係者から相談が来る前に、「何だかやせてきたな」と気付くこともありますね。利用者さんの体重の増減は常に意識しており、体型や顔色などが気になったときは、できるだけ細やかに食生活を把握・支援するよう心がけています。
牧野:在宅支援の要となるケアマネジャーさんが、栄養状態に目配りしていることはとても心強いと思います。「筋力低下を防ぐためリハビリを」という趣旨のケアプランを拝見することがありますが、運動・栄養・口腔ケアは三位一体の存在で、どれが欠けても十分なケアになりません。食生活に関する課題があれば、ぜひ管理栄養士に声をかけていただきたいです。
経口栄養飲料が「その人らしい食生活」を守る一助に
上野:調理が難しい方は栄養バランスに配慮した宅配弁当サービスを利用していることが多いのですが、それでも油断はできません。味に飽きて残したり、苦手なものを捨てていたりすることもあるからです。やはり栄養が不足していると判断した場合は、クリミールをはじめとする経口栄養飲料をお勧めすることもあります。
牧野:栄養指導の直後だけ改善されても、すぐ元に戻ってしまうようでは意味がありません。その方の生活に寄り添い、続けやすい方法を提案するという意味でも、経口栄養飲料を活用できる場面は多いです。病院では当たり前の存在ですが、在宅支援でもいっそう普及していくといいですね。
上野:試供品を持っていくと興味を持たれる方が多く、気軽に栄養摂取できる手段の一つとして重宝しています。そういえば、スギ薬局では店頭でクリミールを購入できますよね。買い物代行で複数のお店を回るのは時間的に大変なので、日用品や食料品が一緒に買えるドラッグストアに置いてあるのは助かります。
牧野:スギ薬局では、薬剤師や管理栄養士が在宅訪問する際に、店舗の商品をお届け・販売する「おもてなし便」も展開しています。実は今朝も、利用者さんの自宅に1か月分のクリミールをお届けしてきたんですよ。
味のバリエーション増加が普及の後押しに
牧野:従来のラインナップに加えて、2022年9月からは「すっきりクリミール」も店頭販売を開始します。経口栄養飲料はミルク風味のものが大多数で、透明感があるすっきりしたタイプは珍しいですよね。
上野:想像以上においしいですね! 「すっきりクリミール」は初めて飲みましたが、普通のジュースと変わらない味わいです。乳製品が苦手な利用者さんも多いのですが、これなら自信を持って勧められそうです。
牧野:十分な栄養価が含まれているのに飲みやすさが保たれていて、私も驚きました。爽やかな飲み心地だからこそ、「運動の後に1本飲む」など、フレイル予防として導入するのにもぴったりではないでしょうか。
上野:経口栄養飲料も、味の好みや飲む場面に応じて選択できる時代になったのですね。クリミールにコーンスープ味があるように、「甘くない経口栄養飲料」がもっと増えれば、さらに幅広い利用者さんの助けになるのではないでしょうか。
牧野:確かに、スープ味のバリエーションが増えたら楽しいですね! 在宅支援における経口栄養飲料の可能性は、まだまだ広がっていきそうな予感がします。