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ケアマネは「代理人」の原点に戻れ!Vol.21 三原岳/ニッセイ基礎研究所・主任研究員

「ケアマネ 独立性の確保急げ」―。ケアプラン有料化の議論が大詰めを迎えていた昨年11月、日本経済新聞に掲載された寄稿が、ケアマネジャー界隈で話題となった。寄稿者は、ニッセイ基礎研究所の三原岳主任研究員。同紙上では、ケアプランに介護保険サービスを組み込まないと報酬が支払われない制度の問題を指摘し、ケアマネの独立性を確保する方策の一つとして、居宅介護支援費を保険給付から切り離すことを提案している。この大胆なアイデアの真意について、三原氏に聞いた。

三原岳/ニッセイ基礎研究所・主任研究員

―日経新聞の寄稿で伝えたかったことを、改めて教えてください。

介護保険制度の創設時、ケアマネには利用者の「代弁機能」「代理人機能」が期待されていました。それは介護保険サービスに限らず、ソーシャルサービスも含め、利用者の生活を幅広く支えるということです。それが当時の国の考え方でしたし、国会答弁にも残っています。しかし、実態は介護保険の範囲内にとどまってしまい、ソーシャルワークのような機能が発揮できなくなっているのです。

その背景にあるのが、介護保険サービスを組み入れないと、介護報酬が支払われない制度上の問題です。ケアプラン自体は、保険外サービスだけで作成することも可能ですが、給付管理のみを評価する仕組みになっているため、それが不要な介護保険サービスをケアプランに盛り込む温床になっていると思います。

さらに、居宅介護支援事業所の9割近くは、他の介護サービス事業所に併設されており、独立型は1割程度に過ぎないのが実態です。ケアマネが独立性を確保しにくいため、代理人の仕事がやりづらくなっていると考えています。

居宅介護支援費を市町村の地域支援事業に組み込めば、さまざまな社会資源をケアプランに反映できる上、介護保険と異なる収入源を持てるので、ケアマネが独立性を発揮しやすくなるのではないかというのが、日経新聞の記事で伝えたかったことです。

ただ、あくまで一つの選択肢として示したものですし、仮にこれが実現した場合、保険者の権限や影響力が強まり、専制が起こる懸念もあります。

■自分が何を知らないかを知る

―介護保険が創設された背景には、行政がサービスの内容を決める措置制度の反省もありましたが、保険者の権限が強くなると、措置に逆戻りする恐れもあります。

要介護認定とケアマネジメントの業務を分けたのに、ケアマネジメントを地域支援事業に移したら、措置に逆戻りするリスクがある。それはその通りです。居宅介護支援事業所の指定権限も市町村が持つようになったので、ケアマネ側が警戒する理由もよくわかります。ただ、一方でケアマネの皆さんには、利用者の暮らしを支える専門職であることを、改めて自覚してほしいとも思っています。

ケアマネは、利用者と信頼関係に基づく契約を結んでいます。つまり、ケアマネと利用者は対等な関係にあるのです。入院した経験のある方ならわかると思いますが、医療では契約書は交わしません。あくまで承諾書です。医療は専門性が高く、医師が圧倒的に多くの情報を握っているため、対等な関係になりにくい。

ところが、介護の場合、生活の情報は利用者や家族の側が握っており、情報の非対称性が小さく、自己決定できる余地が大きい。だからこそ契約制度が採用されたし、セルフケアプランが認められているのも、そのためです。

しかし、利用者が全て決めるのはなかなか難しいため、こうした対等な関係性の下、専門職のケアマネが介入することで、利用者の代理人としての役割を果たすことが求められます。ケアマネの皆さんには、専門職としての自信と、利用者の代理人としての責任を持っていただきたいのです。

―自信と責任ですか?

代理人としての責任を果たすには、自分の強みと弱み、自分が何を知り、何を知らないかを知ることが大切です。

ケアマネだけで複雑な利用者の生活や心情を全て把握し、全てを支えるのは難しいと思います。このため、医療の知識が乏しいケアマネであれば、信頼できるドクターに聞けるようにする。あるいは多剤投与のことがわからなければ、薬剤師さんに聞く。一方のケアマネは、家庭環境も含めて、利用者のことは把握しておき、必要な情報を他職種に提供する。これによって、ケアマネの能力も向上するでしょうし、利用者の満足度も高まります。

自分が何を知らないか向き合うのは難しいかもしれませんが、これだけ複雑化した社会で全てを知っている専門家なんて、誰もいませんよね。実際、私は医療・介護制度を研究していますが、現場を詳しく知っているわけではありませんので、信頼できるケアマネや専門職から情報を取っています。つまり、「自分が何を知っているか、あるいは知らないか」「どんなことが得意か、苦手か」を専門家として理解しているつもりです。

こうした形で、自分が何を知っているか、何を知らないか把握した上で、知らないことについては、何でも聞ける専門家を持つことが非常に大事だと思います。

本来、それはサービス担当者会議でやるべきことだと思いますが、残念ながら、それが機能しているとは言えない状況です。このため、地域ケア会議が代わりの役割を担っています。

■ケア会議は「専制の舞台ではない」

―2018年10月以降、生活援助サービスの利用回数が国の基準を超えたケアプランについては、地域ケア会議で検証することになりました。これについてはどうお考えですか。

国の財政が厳しくなる中、ある程度制限をかけることは、やむを得ないとは思いますが、市町村がケアプランの中身を変えることになっては、措置の時代に逆戻りしてしまいます。もちろん、「さらに保険料が上がります」とか、財政の観点から市町村が発言することは大切だと思いますが、地域ケア会議が市町村の専制の舞台になってはいけません。

その一方で、専門職が意見を闘わせる場は必要だと思います。特に一人ケアマネの場合は、同業のケアマネや他の専門職の意見を聞く機会が少なく、我流のケアプランを作ってしまいがちですが、独りで全部やるのは無理ですよね。究極的には、何が良いケアプランで、何が悪いケアプランかなんて、誰にもわかりません。さまざまな職種の意見を聞いて、利用者も含めて、みんなで合意形成を図る必要があります。

それをうまくやっているのが、愛知県の豊明市です。豊明の地域ケア会議は議論をオープンにして、誰でも参加できるようにしていますが、市は結論を出さない。場所は提供するけれど、最後にサービスの内容を決めるのはケアマネです。市はケアプランの中身には介入しないことになっています。

■ケアマネの質とコストは分けて議論を

―次の制度改正では先送りされる見通しとなりましたが、ケアプラン有料化については、どのようにお考えですか。

ケアプラン有料化は、あくまで財源の問題です。ケアマネジメントの質の問題とは切り離した方がいいでしょう。財務省は、質とコストの問題を一緒にしてしまったので、論点がわかりにくくなった。財源の問題は、質の問題とは分けて議論すべきです。

ただ、国民の権利意識が高まると、給付費が増えるため、有料化に反対するという一部の考えには納得できません。有料化で利用者の目が厳しくなっても、そうした意見に対応しつつ、過不足なくサービスを調整するのが、本来のケアマネの専門性ではないでしょうか。

確かに、ケアマネジメントに自己負担が発生することで、サービスの利用控えが起こることは否定できません。その点は注意する必要がありますが、お金と質の問題は別です。

―現行の仕組みでも、ケアマネジメントの質を向上させることは可能だと思いますか。

可能だと思います。そのためには、ケアマネが自分の強みと弱みを知ること。そして、信頼関係に基づき、利用者と対等に契約した、代理人としての機能が期待されているという原点に戻ること。さらに、プロ意識を持った専門職同士が、地域ケア会議などの場で意見を闘わせ、利用者を含めた合意形成を図ることが大切だと思います。

三原岳(みはら・たかし)
1995年、早稲田大学政治経済学部卒業。時事通信社記者、公益財団法人東京財団(現東京財団政策研究所)研究員を経て、2017年よりニッセイ基礎研究所。専門は、医療・介護・福祉制度。行政や現場の専門職、市民団体などと幅広く接点を持ちつつ、制度の持続可能性とサービスの質の両立を意識した改革案の提言を行っている。主な著書や論文は、「介護報酬複雑化の過程と問題点」(2015年「社会政策」・共著)など。

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