ケアマネを支える先進自治体 VOL.25
【日高村】めざせ普及率100%!「高齢者もスマホを使える村」の挑戦(前編)
高知の県都から約16km、抜群の水質を誇る仁淀川沿いに位置し、自然の恵みにあふれた日高村。一見、地方の典型的な村のようですが、実は「村まるごとデジタル化事業」が積極的に推進されており、住民におけるスマートフォンの普及率は全国トップクラス。高齢者にもテジタルツールを使いこなしてもらうため、どんな取り組みをしたのでしょうか。本事業で中心的な役割を担った日高村役場の安岡周総主幹に伺いました。
安岡周総(やすおか・まさふさ)さん
(日高村役場 企画課 主幹/友達つくる担当/テントサウナー/ファシリテーター)
80歳代でも3人に1人がスマホを活用!
―「村まるごとデジタル化事業」を始めた背景を教えてください。
ここ日高村も人口減少や少子高齢化の波に洗われ、高齢化率は約43%となっています。将来は生産労働人口が先細り、税収も減少することは間違いなく、「ヒトもカネも足りない」という問題を行政として解決しなければなりません。そこで重要なのがDX(デジタルトランスフォーメーション)による効率化の推進ですが、ハードの導入に割ける予算は限られますし、導入しても住民に使っていただけないのでは本末転倒です。それを踏まえて「村まるごとデジタル化事業」を開始し、その第一歩としてスマートフォンの普及率を上げる施策に着手しました。
―事業の前後で、スマートフォンの普及率はどう変化しましたか。
事業開始前は約65%だった普及率が、現在までに約86%(幼い子どもなどを除外した数値)まで上昇しています。年代別にみると、60歳代で69%→90%、70歳代で40%→70%、80歳代で11%→33%と大幅アップしており、年齢を重ねていても多くの方がスマートフォンを所有し、行政が提供するオンラインサービスなどをご活用いただけるようになりました。単に数値が上がったというだけでなく、ご高齢の方に「私にもできる」と自信を持っていただけたことに大きな価値があると考えています。
活用を阻む「3つの理由」に同時アプローチ
―高齢者の皆さんに対して、具体的にどんな働きかけをしたのでしょうか。
スマートフォンを持たない理由について住民にアンケート調査したところ、第1位「必要ない」、第2位「使い方が分からない」、第3位「価格が高い」という結果でした。普及率を上げるためには、これらのハードルを乗り越えられるような施策を同時並行で行う必要がありました。
「必要ない」という方に対しては、「都合のよいときに必要な情報を得られる」「村の予算削減につながる」といったメリットを説明会で丁寧に説明するほか、フィーチャーフォン(ガラケー)のサービスが遅くとも数年以内に終了することを踏まえ、今から切り替えを視野に入れる必要がある点を強調して訴えました。
「使い方が分からない」という方に対しては、村役場や地域のスーパーマーケットに相談所を設置したり、スマートフォン教室を展開したりして、電源の入れ方など基礎の基礎から気兼ねなく学べる場を用意しました。
「価格が高い」という意見をお持ちの方は、事実誤認の部分もあるのですが、ストレートに説明しても納得を得られないケースがしばしば。そこで、連携する健康アプリを活用し、歩いた距離に応じて日高村でのみ使用できる地域通貨「とまぽ」を付与する施策を打ちました。経済的負担を目に見えるかたちで減らし、健康も意識してもらえるので、一石二鳥だと思います。
「スマホが使える未来」をイメージしてもらう
―取り組みを始めた当初、高齢者の皆さんからはどんな反応がありましたか。
正直、最初のころは受け入れていただくのが大変でした。「年金暮らしで大変なのにどういうつもりだ!」と、お怒りの電話が村役場にかかってきたことも一度や二度ではありません。しかし、そうした訴えの背景にある不安をくみ取り、施策に反映させることで、少しずつ本事業の意義やメリットが浸透していったのだと思います。
説明会にしても、当初は地域の大きなホールを借りて、指定の日時に人を集めようとしたのですが、ほとんど誰もいらっしゃらない状態でした。これを反省し、こちらから各地へ出向くかたちに変更。村内にある82自治会に、寄り合いのタイミングなどに合わせて私がうかがい、お時間を頂戴して説明するスタイルが定着しました。
―スマートフォンの必要性について伝えるとき、どんな点に注意しましたか。
「持たないとあなたが困る」というメッセージだけでは不十分で、事業の全体像や行政が目指す未来を知ってもらうことが肝心だったと思います。例えば、「子は宝と言うけれど、このままでは自分たちの医療費などで大きな負担をかけてしまいます。そうではない社会を残したいですよね」といった話の持っていき方。自らの意識や行動が変わることで、世の中にどんな積極的な影響を与えるかを、具体的にイメージしてもらうことが大切です。加えて、地域コミュニティーのリーダー的な役割を持つ方に協力を依頼するなど、「仲間」を増やしていったことも有効でした。
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