白木裕子の「実践! 仕事力の磨き方」 VOL.33
自治体とケアマネ、乖離するケアプラン点検への意識…現場はどうする?(後編)
日本ケアマネジメント学会副理事長の白木裕子先生が、介護保険制度や社会情勢に対応するためのポイントや心構えを、わかりやすく伝授する「実践! 仕事力の磨き方」。今回は、認定ケアマネジャーの会の調査で、自治体の関係者とケアマネの間の意識に大きな乖離があることが明らかになってきた「ケアプラン点検」を取り上げます。
点検を受け、「辞めたい」と言い出した人も…
そういえば、ケアプラン点検を受けたことがきっかけで「もう辞めたい」と言い出したケアマネジャーに会ったことがあります。
状況をつまびらかにするのは控えますが、とにかく、その人はケアプラン点検の担当者から「このままでは、減算ということになりますよ」と言われてしまったと嘆いていました。
そして、そのケアマネジャーは「減算となれば、事業所に大きな迷惑をかけてしまう。とても仕事を続けられません」と言い出したのです。
当然ながら、ケアプラン点検は、実地指導の場ではありません。不備を見つけて修正を求める場ではなく、適切なケアマネジメントを実現するため、自治体とケアマネジャーがともに知恵を出し合う場です。
ただ、残念ながら、ケアプラン点検と実地指導を同じものと誤解している自治体職員は、あまり珍しくはないようです。なにしろ、ケアプラン点検と実地指導を一緒に行ってしまう自治体もあるくらいですから。
理解のない自治体と向き合う際の工夫点
ならば、そうした自治体職員とケアプラン点検で向き合わざるを得ないケアマネジャーは、どうすればいいのか―。
まず、ケアプラン点検の場で、理不尽な発言や要求があった場合、「その発言・要求は、介護保険法の何を根拠としての発言・要求ですか」と確認してください。
特に、先に述べたような減算をにおわす発言があった場合は、ケアプラン点検は給付抑制ではなく適切なケアマネジメントの実現を目的としていることや、その点は国もケアプラン点検支援マニュアルで明示していることを、きちんと伝えましょう。
もう一つの工夫は、点検後の報告を文書でもらうことです。中には、ケアプラン点検の報告などを文書で残そうとしない自治体もあるようですが、そういう相手でも、ケアマネジャー側はあくまで文書でやり取りをつづけていくべきです。
そして何より、点検をうけるケアマネジャーと自治体関係者を1対1で向き合わせるのではなく、管理者が同席すること。もちろん、点検の前には担当するケアマネジャーだけでなく、管理者も該当するケアプランなどを確認しておくべきです。
本当は現場にも有益なはずのプラン点検
ケアプラン点検は記録を見直したり、自身を見つめ直したりするための取り組みでもあります。やり方と目的を間違わなければ、現場のケアマネジャーにとっても大変、有益な取り組みとなりえます。
それだけに、「ケアプラン点検とは、ケアマネジャーと自治体が、ケマネジメントプロセスが適正かどうかを確認し、よりよいやり方を探る」ための取り組みであることを自治体側と共有し、前向きに取り組んでいただきたいです。
- 白木 裕子 氏のご紹介
- 株式会社フジケア社長。介護保険開始当初からケアマネジャーとして活躍。2006年、株式会社フジケアに副社長兼事業部長として入社し、実質的な責任者として居宅サービスから有料老人ホームの運営まで様々な高齢者介護事業を手がけてきた。また、北九州市近隣のケアマネジャーの連絡会「ケアマネット21」会長や一般社団法人日本ケアマネジメント学会副理事長として、後進のケアマネジャー育成にも注力している。著書に『ケアマネジャー実践マニュアル(ケアマネジャー@ワーク)』など。
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