ケアマネジメントスキルアップ講座 VOL.05
医療との連携のために必要なこと(準備編)
高齢者に多い疾患に関する基本知識の習得
介護職出身のケアマネジャーのなかには、十分な医療知識がないから医療職と話をするのに気後れしてしまう人がいるとよく聞きます。しかし、「十分な医療知識」とはどの程度の知識かというと、なかなか難しい。ケアマネジャーに必要な医療知識をあえて挙げるなら、高齢者に多い疾患に関する基礎的な知識でしょうか。高血圧や糖尿病などについては、どのような病気でどのような薬が処方され、進行によってどのようなリスクがあるかを知っておくと医療職とのやり取りはスムーズです。また、認知症については、今、医療では「ステージアプローチ」という考え方があります。こうしたことを知っておくと、どの段階でどのような介入が必要であるかがわかりやすいと思います。
しかし本来、ケアマネジャーは医療の細かい知識を求められている仕事ではありません。医療職による疾患についての話は、文脈が理解できればいいと思うのです。つまり、この患者はガンで抗ガン剤を使っている、だから副作用があってしんどいんだな、とわかる程度でいい。抗ガン剤の細かい効用や副作用についての知識そのものは必要ありません。それより、仕事上必要だと感じたときに、わからないことを自分で調べる力があればいいのです。
医療職が話す専門用語や略語がよくわからないというケアマネジャーもいます。しかし、自己流の略語など、医師の私が聞いてもわからないものもあります。ですから、そうした用語は半分ぐらいわかれば十分。よくわからなければ、臆せずどんどん質問すればいいのです。そうすることで医療職に、もう少しかみ砕いて説明しないとわからないのだな、と気づいてもらうのも大切なことです。
認知症のステージアプローチ
認知症はMCI(軽度認知障害)という前駆症状から、発症後およそ10年をかけて軽度、中等度、重度、末期へと進行していく。時間の経過の中での認知症の進行とそれぞれの段階の症状、その時々で必要なケアを明らかにし、長期的視野に立って支援のプランを考えていこうというのがステージアプローチだ。
たとえば、少し前のことを忘れる近時記憶の低下が見られるMCIから軽度の段階では、家族への教育的支援や本人の尊厳を守る心のケアが必要だ。しかし、直前のことを忘れる即時記憶の低下や、昔のことも思い出せなくなる長期記憶の低下が見られるようになる中等度の段階では、介護負担の増大に伴う家族の支援やBPSDへの対応が重要になる。歩行障害や嚥下障害なども出現する重度の段階では、通所介護から訪問介護、外来から訪問診療への切り替えが必要になる場合もある。
「それぞれの段階で必要なケアが違うので、時間的な経過による認知症の進行の段階を知っておくことは大切です」と川越先生は言う。いつ頃独居が難しくなるか、歩けなくなるか、口から食べることが難しくなるかなどの見通しが立つからだ。「何年後にはどのような支援が必要になるか予測を立てて対応できれば、何か起きてからあわてて対応するような後手に回ることがありません」と川越先生。認知症の利用者のケアプランを立てる上で、知っておきたい知識だ。
- 川越 正平 氏のご紹介
- 東京医科歯科大学医学部卒。虎の門病院内科、血液科勤務を経て、1999年、千葉県松戸市にあおぞら診療所を開設。医療面だけでなく生活を支える視点も持って、在宅療養している子どもから高齢者までの患者に対する訪問診療を行っている。また、よりよい臨床活動を行っていくために、介護等との連携や教育、研究、啓発などの活動にも熱心に取り組んでいる。
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